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名称の由来

墨会館の名称の由来は、建物が艶金興業という繊維関係の会社の本社事務所として建設されてから長年使用されており、社長の名字が墨さんであったことから「墨会館」と呼ばれています。

丹下健三氏が設計された経緯

約60年前、艶金興業の本社事務所の建設に際し、社長が雑誌で見た「コンクリート打放し」の旧東京都庁(有楽町)の建物を気に入り、設計者の丹下健三氏に設計を依頼することとなりました。最初は断られましたが、粘り強く交渉して実現しました。
写真は、建設当時の 設計図面を保管されている資料室です。

建物の外観について

【高い壁に囲まれた外観
毛織物産業の工場地帯であったので、騒音対策として建物全体が壁で囲まれています。
外部に面した壁は、窓を少なくしたため、暗くなる建物内部への明り取りには様々な工夫が施されています。
【建物北側のテラコッタ】
建物壁面のうち北側のみテラコッタ(陶器)による、吹き抜けのある構造となっています。
北側は、道を隔てて住宅があり、防音対策が必要でなかったことから、明かり取りの役割もかねています。

手作りのテラコッタの色あいは、特徴的なスタイルとなっています。
【ピロティ】
建物中央部にある鉄格子扉内側のスペースは、 「ピロティ」(柱だけの空間)になっており、 集会室棟と公民館棟、二つの建物の車寄せの役割をしています。
中庭との壁面は、建物北側壁面と同じテラコッタ(陶器)製になっており、明かり取りと風通しの役割をしています。
改修工事でのピロティの耐震強化対策では、4本の柱の コンクリートを打ち直し、建設当時より片側5cm(計10cm)太くしてあります。
鉄格子扉をそのまま生かすことで、建設当時の姿が残るように改修されました。 

建物の内部について

【玄関ロビー】
吹き抜けになっており、2階全体をガラス窓にしてあるため、明るいロビーになっています。
【玄関ロビーのタイル】
ロビー壁面は、 テラコッタと同じ「信楽焼」 のタイル壁になっています。
特注品で、色あいと手作り感のある風情が人気となっています。室内にタイル壁を設置したことは当時では珍しかったそうです。
【集会室棟天窓】
高い塀に囲まれているため、天窓(トップライト)や壁壁面上段部に「小窓」を設け、明りが室内に届くよう工夫がされています。
【欄間風の板ガラス】
各部屋を仕切る壁面上部には、欄間様式の透明の「板ガラス」が使用されています。
室内には、和の様式が取り入れられており、洋風な外観とは、異なった趣になっています。
【中庭を望む景色】
敷地中央部に広い中庭を作り、中庭に面した場所は総ガラス張りになっています。

建物内からは、中庭全体が見渡せるようになっています。
【ロビーのテーブルとイス】(レプリカ)
墨会館は、建具やイス・机なども含めて、一人の建築家の構想のもとに設計され、それらの設計図は、今も残っています。
現在ロビーに展示されているこのテーブルとイスは、公民館開館時に複製されたものです。
【ホワイエの雪見障子】
公民館棟ホワイエ(廊下)の南側ガラス戸は、和の要素を取り入れた「雪見障子」になっています。
日よけと明かり取りの役割をしています。
【集会室棟玄関ロビー】
入口正面には、公民館棟ロビーと色が異なる「タイル壁」になっています。

集会室は不特定多数が使用するため、不燃化等の改修を行っていますが、天井の木製桟や壁・扉類は、薬剤を浸透させて不燃化を図り、昔の雰囲気をできるだけ残すようにしてあります。
【集会室】
コンクリート造りの特徴として、手をたたくと音が残ります。
この残響が良いと、利用される方もいます。
丹下健三氏は60年前に、この 集会室で3つの電動装置を取り入れました。
①   正面スクリーンの屏風に似た折りたたみ壁は、開閉を電動化にしました。
②   右手の中間壁は、重い木造であったため、開閉をギアとチェーンの電動化にしました。
③   天井照明は
用途に合わせて照明の高さを変えられるよう電動化にしました。
正面スクリーンは「屏風」形式になっており、ここにも和の要素が取り込まれています。
【中庭】
二つの建物の間には、芝生の広い中庭があります。
昔は、ガーデンパーティーが開かれていました。